僕の生徒を紹介します









僕のクラス、総勢38人の3年1組。このクラスで一番背が高いのは…


「あの…屑谷くん、ちょっと頭さげて」



黒板が見えない
屑谷隆平×小枝まこ




屑谷隆平(クズヤ リュウヘイ)189cm。バスケ部の主将である彼は、後ろから肩を叩かれて肩を竦めた。


「あ、ごめん」

振り返った彼の視線の先には、このクラスで一番背の低い生徒。

「こっちこそ」


小枝まこ。145cmほどしかない彼女は、申し訳なさそうな視線を向けた屑谷に、同じ表情を浮かべた。


席を変えてあげた方がいいのは、一目瞭然。でも、二人だけを変えるわけにはいかない。かといって、席替えをするにはまだ早い。二人には悪いけど、もうしばらく我慢してもらうしかない。


「隆平。小枝ちゃんが可哀想」

「んなこと言われても」


それにしても…屑谷はでかすぎだし、小枝は小さすぎる。正面から屑谷を見れば、小枝の姿はまるで確認できない。だいたい屑谷は目付きが悪いうえに仏頂面で、さらにそのでかい図体のせいで、女子からは近より難いと言われている。

まあ…実際のところは、容姿に似合わない謙虚な性格で、その体を武器に喧嘩や問題を起こすことはないのだけど。


「はい、じゃあここを…」


授業が進むにつれて、下へ下へとチョークが進む。そうなるほど、小枝は見えなくなる文字を追うように、頭を右に左に揺らした。

何度も声をかけたり肩を叩いたりするのは申し訳ない、と感じているのが彼女の表情からわかる。


消されてしまう前に書かなきゃ…最悪、誰かにノートを見せてもらえば済むのだけど…と。

困りと焦りの浮かぶ顔。

屑谷は広い背中にその空気を感じたのか、僅かに頭を下げた。
いや…これだけじゃ見えないか、とほとんど机に伏せる形になった。その行動が可笑しくなったのか、小枝は思わず彼の背中に吹き出した。


「そんなに下げてくれなくていいよ」


慌てた様子で振り返った屑谷は、小枝が笑みを浮かべていることに気づき、安堵の息をついた。

「毎日そんなことしてたら、体痛めちゃうよ」

「いや、でも…」

「じゃあ…」


小枝はしばらく眉間にシワを寄せてなにかを考えると、思い付いたようにぱっと顔色を変えた。彼女の綺麗な二重の目が見開らかれ、右手に握っていたシャーペンがカチカチと音をたてた。


それが合図ね。気づかなかったら、ノート貸してね。



小枝は、頷いた屑谷にふわりと笑ってシャーペンでとんとんとつついた。屑谷は驚きに目を開いたようだったけど、切れ長の目の形は変わらないまま。その代わり、短髪のせいで露になった耳が真っ赤に染まったことがわかった。

「屑谷くん?」

「ばっ…シャーペンごときで、穴なんかあかねえ」

なにそれと、また吹き出した小枝。屑谷は面白くなさそうに、前を向いてしまった。
小枝は楽しそうに、シャーペンをならした。



『カチカチッ』
“黒板が見えない”


────────…
(……。)
(…あ、下げてくれた)

(ま、まこが屑谷に絡まれてる)
(屑谷の野郎、小枝さんに…)



配布元:DOGOD69
管理人:壱原様






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