僕の生徒を紹介します








クラス一の美女と、
クラス一の不思議系男子。

二人は昔、恋人でした。


幼かった僕等
佐伯大輔×間宮エリナ




「エリナ、付き合わない?俺たち」


あー…
自分のクラスの生徒が告白される場面を見るのは、これで何回目だろうか。…まあ、目撃するのは、8割が今目の前にいる女子生徒なんだけど。

「えー…と、…ごめんなさい」


間宮エリナ。
クラス一の美女。整った顔立ちと、抜群のスタイル。明らかにモテるであろう彼女の秘密を、僕は知っている。


「私、あなたのこと好きになれそうにない」


そう言って、相手に背を向けた間宮。その目は伏せられていて、僕の姿に気づいて恥ずかしそうに見開かれた。


「ニッシー」

見てたのかと気まずそうに笑った間宮は「みんなには黙ってて」と、唇に人差し指を当てた。

「今日もモテてますな」

「やめてよ」

へらへら笑いながら、でも本当に困っているのがたれた眉から感じられた。

間宮エリナが寂しげな笑みを僕に向けるから、僕はいつかの放課後を思い出した。いつかの放課後、間宮は忘れられない恋があるのだと口にした。
何でもない話。まだ17、18の子供だ。まだまだこれからの彼女が、そう言って教室内のひとつの席を指差した。

あの日のことが脳内を掠めたのだ。驚いたよ、敵なしのマドンナが恋した男が、自分のクラスにいたことに。それから、その男が…


『キーンコーン…』


「じゃあ気を付けて帰れよ」

ガタガタと椅子を机の上にあげる音。

僕の声に動きを止め、肩から腰へとかけたスポーツバックの端を触った。

佐伯大輔。いつも眠たそうな目をして、ぼーっとしているくせに学年で首位を争う秀才。基本無口で無愛想な男。まるで女に興味がないような振る舞い。ホモだのゲイなどという噂が出回るくらいだ。
そんな佐伯大輔が…

「課題テスト、学年2位だったよ」

「あ、ほんとすか」

「うちのクラスの平均点、佐伯がいてくれるから助かるよ」

低いと職員室で叩かれるからなあ…なんて、不純な理由だけど。でも、佐伯の学力の高さには本当に感心してる。当の本人は驚いた顔もせず、ただやんわりと頭を下げただけ。そこがまた佐伯らしいと言うか、なんと言うか。

ざわざわと教室からなくなる雑踏。佐伯はちらりと黒板の上の時計を見上げた。

「あ、悪いな。部活だよな」

「大丈夫す。1年入ったんで、俺たち着替えるだけですから」

俺に敬語使ってくれる生徒って、なかなかいないのに…感動してる俺に、佐伯は変な顔してますよと笑った。



「あ、それで、進路のことなんだけど…いろんな先生からプレッシャーかけられると思うけど、佐伯は佐伯の好きなようにしろよ」

だいたい佐伯ほど頭よかったら、私立だの進学校だの選択肢はたくさんあっただろうに。うちはTHE普通なのに。

「ありがとうございます。頼りにしてますよ、先生」

でもなんとなく、なんとなくだけど…気づいてた。

「佐伯はさ、なんでうちの学校来たの?あ、言い方がよくないな」

「…さあ、何ででしょうね」

間宮が受けたから?間宮の学力なら、この学校を選んだことが正解だと言える。離れることは、大人だって不安だ。でもこの年なら尚更だろう。


「まだ、幼かったんですよきっと」

佐伯はそう言って豪快にあくびし、眠たそうに「そろそろ部活行きます」と頭を下げた。

「ああ、頑張れよ」


“幼かったんです”
それは、僕の考えが正解だったと言っても、いいのだろうか。



────────…
(ふぁ〜)
(佐伯先輩寝不足っすか)
(……寝満足?)
(……………。)

配布先:雲の空耳と独り言+α
管理人:紫ノ薊様





‐8‐


/33 n


⇒しおり挿入



⇒作品艫激rュー
⇒モバスペ脾ook