僕の生徒を紹介します








「屑谷隆平、佐伯大輔、園江優、波田野マサ、早崎勇馬、ベン、森慎吾、山登太一、鷲タツヤ」

3年1組、男子ソフトボール計9名。

気合いの入った白い体操着と、3年の紺色のジャージ。…ハーフパンツ。空に雲はなく、太陽の光を全身に浴びさせながらの試合開始。


悩殺だらけの10回ゲーム
3年1組ソフトチーム



5月始め。
ゴールデンウィーク前に行われる、一年で最初の一大イベント、球技大会。他学年へとアピールするための行事…ということは、暗黙の了解。クラスの親睦を深めるというのは、二の次なのだ。


僕は整列した自分のクラスのチームを眺め、その顔を左から順に確認した。


「ニッシーのクラス、ずるくね?」

「え?」


全員の確認が終わったあと、自分のクラスではない生徒に背中を蹴られた。

「とぼけんなよ。だってバスケ部の巨人エース屑谷に、イケメンで運動神経抜群の園江と波田野。あと、早崎、森、鷲の3馬鹿トリオ。」

「あの三人いれば嫌でも盛り上がるよなー。しかも鷲は野球部だし」

「そうそう。それに山登!あんな物騒な奴まで…」

「佐伯は頭脳戦に強いだろうし…なにより留学生のベン!あれは反則」

口々に文句を言われましてもね…
決めたと言うより、やりたいものを選ばせたらこんなチームができてしまったんだ。僕はなにもいってない。最低限参加種目には、その部活に所属している生徒は三人まで、というルールは守ってる。


『アウト!チェンジ!』


「は?もう交代?」

「鷲がピッチャーとかせこすぎ!」


……そうだなあ。
彼は野球部のエースピッチャーだからなあ。さすがにそれはずるいかも。そう思ったが、彼らのことだ…全員ピッチャーがやりたいに違いない。つまり、次の回のピッチャーは別の生徒だろう。



「げっ初っぱなから園江かよー!」


園江優は、学年一のモテ男。甘いマスクと優しすぎる性格ゆえ、女泣かせでもあるが…非の打ち所がないくらいに、パーフェクトな容姿。
クラスの応援以外にも、多くの応援が回りを囲む中、黄色い声が飛び交うのは言うまでもない。



『キンッ』


「きゃー園江センパーイ!!」

無難なところに打ち込まれたそれ。涼しい顔で一塁のベースを踏んだ園江は、次のバッターへと軽く手を上げた。

「だっ…次は波田野かよ!」

波田野マサ、彼はサッカー部のキャプテン。…こうしてみると、各部活の選りすぐりばかり…
波田野は難なくバットへとボールを当て、易々とベースを踏んだ。

「女子の声、ムカつくな。萎える」

「僻むな僻むな」

「ニッシーうざい。…げっ次は屑谷かよー!」

屑谷は190近くある巨体を活かすように、ボールを打ち上げた。それは躊躇いなくフェンスを越えて、姿を消した。
その瞬間、再び歓声が上がる。

初回から、惨いことしてくれる。

そんな僕の心配をよそに、試合は進む。

3馬鹿トリオ、早崎、森、鷲は誰もが期待した通りの盛り上げ役をこなしてくれた。ピッチャーも、僕の予想通り毎回の交代。鷲だけの活躍は防ぎたかったようだね。


うまく展開されていく試合。
恐らく…学年トップの佐伯大輔の戦略だろう。

黄色い声援が止むことはなく、もう声が枯れると情けなくなる頃…ついに迎えた制限時間。
最終回のピッチャーは留学生のベン。彼は楽しみすぎてフォアボールのオンパレード。そして、失点。外人だというだけでうけをとり、それも許される。まったく理不尽だ。

そして最後の攻め。
…といってもする必要はないのに…普通の試合ならコールド勝ち。

それでも最後までやりたがるあたり、大人げない。


「ひょえー波田野からかよ!」

まあ、誰もが予想した通り、鷲一塁、屑谷二塁、波田野三塁。

「これ見る価値なくね?なんか俺、男として自分の存在恥ずかしくなってきた」

それは男子の意見。
女子は絶え間なく悲鳴をあげており、そりゃもう失神しそうな勢い。

相手チームも初戦から可哀想に…

「佐伯!佐伯!さえ……」


『キーーーン……』

その音と、時間切れの笛。

足元を吹く風。
白い体操着と、白いボール。
悲鳴は途絶えない。
爽やかなナインの笑顔もまた、途絶えない。

僕は微笑ましくその光景を見つめた。



僕のクラスのソフトチームは、問題なく、そして楽に優勝を果たしてしまうことになる。まあそれは、もう何時間か後の話だけども。


───────────…
(3の1のソフト見に行こ!)
(行く行く!!)

(……面白くねえ〜)


配布元:無気力少年。
管理人:市ノ瀬様




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